健康睡眠プロジェクト

桑田真澄さん × 枝川義邦先生 対 談トップアスリートの睡眠

第1回

人間にとって欠かすことのできない「睡眠」。その時間は人によってもちろん違いますが、どんな人でも必ずとるもの。私たちが生きていく上で必要な睡眠は、どのような影響を人に与えているのでしょうか。睡眠の大切さもあわせて、今回は、元プロ野球選手の桑田真澄さんと脳神経科学を専門とする早稲田大学の枝川義邦教授との対談をお届けします。第一回テーマは、「トップアスリートの睡眠」です。

トップアスリートはどれくらい
睡眠時間をとる?

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枝川:まず最初に、一般的なアスリートと違って「トップ」の方への想像がなかなか及びません。桑田さんをしても、毎日のトレーニングや試合をしてへとへとになって帰ることはあったんでしょうか?

桑田:そうですね、やはりトレーニングは肉体的にも精神的にも疲れるんですよね。布団に入ったらすぐに熟睡していました。

枝川:なるほど、短い時間で効率の良いトレーニングをしたり試合もすごく集中されていると。そういうケースでは、抱えるストレスも結構大きかったと思います。ストレスは精神面だけでなく、身体にとっても負担になるものです。そのように筋肉を使ったり身体に大きなストレスを掛けている方は、睡眠時間を長くとるのが良いでしょう。アスリートは一般的に睡眠時間が長いと言われますが、桑田さんは現役時代、どれくらい睡眠時間をとっていましたか?

桑田:8時間ですね。8時間くらいで自然と目が覚めていました。僕はどちらかというと朝型で、現役の時は寝て目が覚めたらすぐに食事もできて、ぱっと動ける方なんです。二度寝しようと思っても、5分ぐらいすると「ああもうこれはダメだ」って起きちゃうんです。これは今でも同じですね。

枝川:なるほど。ちなみに、睡眠の質によって、野球のパフォーマンスに何か影響は出たりしていましたか?

桑田:僕は、長い間、活躍できた一番の要因は、やはりよく眠れたことだと考えています。

2時間も睡眠時間が減った?

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枝川:引退後の今は、睡眠時間はどれくらいですか?

桑田:6時間ですね。やはり自然と目が覚めます。

枝川:現役時代と現在では、睡眠に対して何か違いを感じますか?

桑田:現役時代は、毎日のトレーニングや試合で投げて疲れていて、プレッシャーも当然ありましたし意外とスパッと眠れたんです。反対に引退してからは現役時代のように眠れなくなりました。別にプレッシャーもないのに、寝つきが悪くなったと言いますか、眠ろうと思うとなかなか眠れなくて。

枝川:桑田さんといえども現役をお辞めになると、普段体を動かされていても、アスリートとして試合に出られていた時と比べて格段に生活が違うと思います。ですから、同じような感覚で眠らないといけないと思うのは逆に自分のストレスになってしまいますので、そういうもんだ、必要な時に必要な分だけ取れていたんだというような感覚でよいと思います。今は身体を動かしながら、とは言え現役の時とは違う形になったと考えると、睡眠は自然についてくると思うんです。

桑田:睡眠時間が減ったからといって心配しなくても大丈夫ということですね。

枝川:はい。ですが最近は、6時間では短いと考えられてきていまして。もうちょっと気持ち長めにとっていただくというのが本当は良いと思います。

睡眠不足だとパフォーマンスも
悪い?

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枝川:睡眠を日々しっかりとられている桑田さんですが、睡眠不足というような日もあったかと思います。

桑田:はい、若い頃にはありました。プロ入りした当初、キャンプの休日に遅くまで起きていて、5~6時間の睡眠で次の日球場に行ったんです。すると、やはり身体がだるいですし、集中力がなかったんですよね。「ちゃんと眠っておけば良かった」とすごく後悔しました。やはり睡眠不足は良くないと思いますね。

枝川:おっしゃる通りです。身体のパフォーマンスも、脳のパフォーマンスも、睡眠が足りないと充分に発揮できないものですから。

睡眠はバランスが大事?

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桑田:僕がいつも意識しているのは「バランス」です。トレーニングして、栄養摂って、睡眠をとるというバランスを意識して高校時代からずっとやってきました。ですが、プロの世界には「誘い」というのが時々ありまして(笑)。先輩から誘われたら行かなきゃいけないとか、オフなんかは「試合がないからちょっと飲みに」なんて。それで睡眠不足だともうダメ。野球もダメだしゴルフもダメ。次の日の集中力がないですし、もったいないですよね、ダラダラしてしまって。

枝川:その考えはチームの皆さんも同じでしたか?

桑田:大体プロに入ってくる人というのは体格に恵まれた人なので、少々不摂生しても体力でカバーできる人がほとんどなんですけど、僕は身体が小さかったし、体格的に恵まれてなかったので、そういったことも含めてトータルで勝負しなきゃいけなかったのです。だから、常に「バランス」というのを考えていました。

ゴルフは野球ほど上手くは
上達しない?

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枝川:余談ですが……今はゴルフもしてらっしゃると伺いましたが、上達具合はいかがですか? というのも野球は小さい頃からやってらして、睡眠と関係して説明が付く部分って大きいのですが、ゴルフは多分大人になってから、お付き合いとかで始められたのではないかと思います。そうするとお忙しい中でゴルフの練習を進めて、技能を身に付ける過程がどのような曲線を描いてきたかというのを伺いたくて。

桑田:ゴルフに本格的に取り組んだのは引退してからです。というのも、現役時代にゴルフができるのは、オフシーズンのみ。しかも、11月は秋季キャンプ、1月は自主トレがありますから、ゆっくり時間が取れるのは12月だけなんです。年が明けて、またゴルフができるのは翌年の12月になってしまいます。当然、感覚はゼロに戻ってしまうので、現役中はなかなか上達しなかったです。

枝川:桑田さんの運動能力を持ってしても?

桑田:なかなか自分のイメージ通りには上手くならないですよ。難しいです。

——— 桑田さん、枝川先生、ありがとうございました。現役時代、8時間睡眠だったのに対し、引退後は6時間睡眠に変わった桑田さん。目が自然と覚め、睡眠不足の状態ではないことからも問題はないとのこと。さらに「睡眠」「トレーニング」「栄養」のバランスを大事にしていたと、その行動こそがトップアスリートとして長く活躍できた一つの要因なのかもしれませんね。さて、次回は「脳の働き」をテーマにお届けします。

PROFILE桑田 真澄

くわたますみ/1968年生まれ。野球解説者、野球評論家。PL学園高校で5季連続甲子園大会に出場し、通算20勝しエースとして活躍する。1985年、読売巨人軍にドラフト1位指名で入団。プロ入り2年目に2桁勝利し沢村賞を獲得、94年には年間MVPに選ばれた。1995年に右肘靭帯断裂の重傷を負い一時戦線離脱をするが、手術を受けて1997年に復帰。2002年最優秀防御率。2006年にはメジャーリーグへ挑戦を表明し、ピッツバーグ・パイレーツに入団。2007年6月にメジャー初登板。2008年に現役引退。2010年に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。現在は東京大学大学院総合文化研究科特任研究員として研究を続けている。野球解説、評論、執筆活動、講演活動も行っている。

PROFILE枝川 義邦

えだがわよしくに/1969年生まれ。早稲田大学研究戦略センター教授(早大ビジネススクール兼担講師)。1998年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了、博士(薬学)。2007年早稲田大学ビジネススクール修了、MBA(経営学修士)。同年早稲田大学スーパーテクノロジーオフィサー(STO)の初代認定を受ける。脳の神経ネットワークから人間の行動まで、マルチレベルな視点による研究を進めており、経営と脳科学のクロストークを基盤とした執筆や講演も行っている。著書に『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(明日香出版社)、『記憶のスイッチ、はいってますか』(技術評論社)、『タイプが分かればうまくいく!コミュニケーションスキル』(共著、総合法令出版)などがある。

次回

桑田真澄さん×枝川義邦先生 脳の働き

対談 第2回

327日(火)に更新!

脳活すいみんTOPICS桑田真澄さん×枝川義邦先生対談